不当景品類及び不当表示防止法(以下,「景品表示法」といいます。)の改正法が成立し,平成26年12月1日より施行されました。また,同年11月19日,同法について,課徴金制度を導入した改正法が成立しました(後者は平成28年春ころに施行される見通しとなっています。)。
以下,その概要をご説明いたします。
1 改正に至った経緯
景品表示法は,一般消費者の利益を保護するため,提供する商品やサービスについて,実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるおそれのある表示(不当表示)を禁止しています。
先般,ホテル,百貨店,レストラン等において,食材の名称や産地を偽って表示する不当表示が次々に発覚し,消費者の信頼を失いました。このような相次ぐ食材偽装発生の背景には,事業者のコンプライアンス意識の欠如,景品表示法の社会周知の不十分さといった問題があったとされ,消費者庁が,景品表示法の改正に乗り出したものです。
2 平成26年6月6日成立改正法の内容
(1)事業者のコンプライアンス体制の確立(法7条,8条,8条の2)
事業者に対して,表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置等を講じる義務が課されました。
また,内閣総理大臣は,事業者の管理体制整備について指導及び助言をすることができるようになりました。必要な措置を講じていない事業者には勧告をすることができ,勧告に従わないときは公表を行うこともできます。
(2)情報提供・連携の確保(法10条,15条)
適格消費者団体は,事業者の行う不当表示に対してその停止等を請求することができますが,この制度の実効性を高めるために,消費生活協力団体及び消費者生活協力員が不当表示等に関する情報を適格消費者団体へ提供できることとされました。
また,内閣総理大臣,行政機関,地方公共団体,国民生活センター等が,必要な情報の交換を行って密接な連携の確保に努めることも定められました。
(3)監視指導体制の強化(法12条)
行政による監督指導体制を強化するため,より事業の実情を把握することのできる事業所管大臣や都道府県知事に対して,消費者庁長官の権限を委任ないし付与することができるようになりました。
3 平成26年11月19日成立改正法の内容(課徴金制度)
現行の景品表示法で可能であったのは,違反行為に対する措置命令や内容の公表まででした。そこで,制度の実効性をより高めるため,課徴金制度が導入されました。
課徴金制度とは,要約すると,事業者に対して,不当表示があった商品や役務の売上額に3%を乗じた額の課徴金を賦課するというものです。この度の課徴金制度は,事業者が自ら違反行為を申告した場合に課徴金を減額する旨の定めや,一般消費者の被害に対して自主返金を行った場合に課徴金を免除または減額する旨の定めが設けられており,不当表示が行われることを防止するとともに,不当表示が行われてしまった場合の改善処置を促進する効果も図るものとなっています。
以上のとおり,景品表示法の改正により,事業者には,商品やサービスの表示に関する高いコンプライアンス体制の確立が求められています。